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11/24 20:56 | info はあ、はぁ、はあ……
湿った荒い息だけがこの部屋をこだまする。呼吸を整えながら目をつぶると、溢れ出た涙がこぼれ落ちた。 「また……どうして……」 足の力が抜け、その場に座り込む。 涙は生温かくて熱を持った頭を冷やしてはくれない。自然と冷えるのを待つしかないようだ。 手元にあった冷たいはずであるものに手を触れると、ヌメりという不気味な感触に身が縮む。温かい。人の体温だ。 手を離し、眼前にかざした手のひらには朱色の液体がついていた。 再び手を戻し、柄を掴むと、そのまま自分の腕へと突き立てた。 「熱い…… 冷たくはならないのか」 ため息をつく。前には進めない。いつもの繰り返し。 ふと、自分の腕に冷たい感触を感じ、目をやった。 「痛いよ……?」 それは今まで眠っていた彼女の手だった。横になりながら、手をのばしてボクの手を掴んでいた。 「大丈夫。熱いだけ」 「なら、冷やしてあげる。私は冷たいから」 彼女は起き上がり、ボクの首に手をまわして抱きしめてくる。 「ごめん……」 彼女の白いワンピースは朱く汚れている。それはボクのせい。 不安になると、彼女を傷付けてしまう。それでも彼女はそばにいてくれる。だから、繰り返してしまう。何度も……何度も…… 「大丈夫だよ。薬、飲める?」 ボクが頷くと、彼女はボクから離れ、戸棚からゼリー一個と薬を3錠手に取り、冷蔵庫から未開封の500mlペットボトルの水を取り出し、ボクに渡した。 ボクはゼリーを食べた後、薬を受け取り、口に含みながら水を受け取って飲んだ。 なんの薬かと言われてもよくわからない。飲むようにと医者から言われているから飲んでいる、という感じだ。 「このままじゃダメ、だよな」 そう呟いて彼女を見つめる。 「どうしたの?」 選択としては一番選びたくなかったけれども、きっと最良の選択はそんなもの。 「ボクたち、わかれよう」 「え? どうして、そうなるの?」 彼女は無理に笑っているのかうまく笑えていない。 「……うん。ごめん」 「ねえ、もう一度よく考えようよ。私は傷付いても大丈夫だよ。ナイフで傷付けられても痛くないから、ね?」 涙を流しながらわかれたくないと頼んでくる彼女の顔を見ていられず、目を伏せて謝る。 「ごめん……」 「私が痛いのは一人になったときなの。一人は嫌。一人は怖い。一人は痛いの……!」 肩を捕まれ、揺らされる。それでも、もう決めたから。 「ごめん」 彼女は力無く泣き崩れ、しばらくすると鼻を啜りながら顔をあげた。 「……そっか。もう、ダメなんだね」 彼女は立ち上がり、ボクの家を出ていく。 「ばいばい、またね」 「……さようなら、だよ。現在進行形で大好き。たぶん、後にも先にもキミだけ」 ボクの言葉が届いたのか彼女は一度振り返り、弱々しく笑った。 彼女のいた場所にはピンク色のピルケースが落ちていた。 「きっと、これでよかったんだ。これで……」 そのピルケースの中にはボクの飲んでいるものと同じ薬が入っていた。
05/07 18:26 | 創作 室内からのぞく四角く切り取られた空には青白く輝く満月。足には目に見えない透明な鎖。犯罪者の私に自由なんて存在しない。
「これがキミを殺した罰か。それなら、赦される必要はないな」 好きという感情は簡単で、複雑で、そして辛いもの。殺してしまいたいほど好きになってしまった、ただそれだけ。 きっと、そんな私は綺麗に死ねるはずがない。 それなら、最期くらい自由に―― 「もとより、枷なんてこの心にしかない。見世物として死ぬのなら、最も惨い死に方でキミの所に」 そう言った少女の頬には涙が一筋伝ったが、口元には笑みが浮かべられ、その涙が何の感情の現れなのかはわからない。 彼女の細く病的な足が窓の縁にかけられたため、月光によって青白さが際立っていた。窓の縁にかけた足に力を入れ、前に倒れ込むようにもう片方の足を床から離した。 体重が移動され、重心より前に重さが集まってしまった身体はまえのめりになった状態で地面との接触を待つ。 落下していく中、少女は目をつぶり、この先の自分を思う。 下には大量の薔薇が植えられていたはずだ。9階程度の高さから落ちればきっと助からない。地面にぶつかるまで30m弱もあるのだ。確実に死ねる……。 「朝起きたら、全て悪い夢だったらいいのに」 その後、少女はドンなどとは言い表せない、鈍い音とともに息絶えた。 翌日、発見された少女は罪人のためか何事もなかったかのように撤去されが、荊の刺には緋色の液体が残っていた。 ――――― 『青い月。緋色の棘、突き抜ける悪夢と四角い窓』 夜喰いさんから頂いたお題です。
04/30 23:04 | 創作 |
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